心理職の職業倫理 第5原則について
今回も、前回の引き続きで『心理職の職業倫理』の話(心の健康の専門家としての倫理観)をします。
今回は、紹介するのは第5原則。
『 秘密を守る 』。
最初に読んだ時「あれ?変だなぁ」って思ってました。
だって、公認心理師法の第四十一条に、秘密保持義務について記載されているので、もはや職業倫理レベルの話ではないんじゃないかと。
ちなみに公認心理師法の第四十一条では、次の様に書かれています。
公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。
(引用元:衆議院トップページ>立法情報>制定法律情報>第189回国会 制定法律の一覧>公認心理師法)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/18920150916068.htm
さらに、公認心理師法の第四十六条には、次の様に書かれています。
第四十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
(引用元:衆議院トップページ>立法情報>制定法律情報>第189回国会 制定法律の一覧>公認心理師法)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/18920150916068.htm
つまり、一度でも公認心理師として業務を行った以上は、そこで知り得た秘密は一生漏らしてはならず、もしも漏らした場合は、処罰を受けるということです。
但し『正当な理由がなく』の部分が重要で…
正当理由があれば、業務で知り得た人の秘密を漏らしても良いということです。
じゃあ「どういう場合は正当な理由があるとするのか」ということになるわけですが…
これについては法律上には明記されていませんが、教科書には『秘密保持の例外状況』として、以下が記載されています。
(1)明確で差し迫った生命の危険があり、攻撃される相手が特定されている場合
(2)自殺等、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態
(3)虐待が疑われる場合
(4)そのクライエントのケア等に、直接かかわっている専門家同士で話し合う場合
(5)法による定めがある場合
(6)医療保健による支払いが行われる場合
(7)クライエントが、自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判等によって提起した場合
(8)クライエントによる、明示的な意思表示がある場合
(引用元『公認心理師の職責』/野島一彦編/遠見書房/2018/P 56/表4秘密保持の例外状況)
つまり『本人や他人の生命が危機にさらされる場合』(上記1〜3)又は『他の専門の業務に支障が出る場合』(上記4〜7)以外は、本人の同意がなければ秘密を守る必要があるということです。
この辺りの判断が難しいような気がしています。
例えば、あるクライエントが「母親が憎くて仕方がない。殺してやろうと思って、殺害の計画を立てている」と打ち明けてくれたとします。
この場合、先の(1)に該当すると考え、警察に通報すべきでしょうか?
それとも、それをテーマに話をすることで、クライエントの行動が変わる様な関わり方をすべきでしょうか?
それとも、先の(4)に該当すると考えて、クライエントの主治医に相談すべきでしょうか?
それとも、先の(8)を重要視して「誰かに相談してもいいですか?」と聞くべきでしょうか?
どれも間違ってない気がするけど…
どれも正解と言えない気もするし…
あなたなら、しっくりきますか?
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