聞いてほしくない話
・毎日、力も気力もない
・全てにやる気が起きない
・心から楽しむことができない
これって、うつ病でしょうか?
こういう質問をよく聞きます。
不安に思う気持ちもわかりますが…
いつも複雑な気持ちになるんです。
あらためまして。
うつ病予防コーチではありません。
あくまでも、うつ病再発予防コーチです。
と言っても、私も最初はうつ病予防の重要性を訴えていたんです。
でも、だんだんとその難しさを実感したんです。
というのも…
うつ病予防の重要性を認識しているのは、うつ病を経験したことがある人だけで、うつ病を経験したことがない人は、重要性を認識していない。
という当たり前の事実に気づくことができたからなんです。
落ち着いて考えればそうなんです。
うつ病を経験したことがない人は、「自分は絶対にうつ病にならない」と思い込みやすいんです。
だって、なったことがないから。
一方、うつ病を経験したことがある人は「自分もうつ病になりうる」ってわかっているんです。
だって、経験してるから。
だから、経験者の人は自分事として聞くけど、未経験の人は他人事としてしか聞けない。
これは仕方がないことなんです。
『正常化の偏見』って聞いたことがありますか?
異常な事態に直面していながら、「大したことにはならないに違いない」「自分は大丈夫だろう」と思い込み、危険や脅威を軽視してしまうこと。
引用元:小学館デジタル大辞泉
これによって、災害時に逃げ遅れるとか、避難しようとさえしないことが起きます。
これも、一種の防衛反応とも言えるんです。
例えば、普段生活してる中で、何か意外なことが起きるたびに敏感に反応していると、心が疲れてしまいます。
だから、ある程度のことまでは動じなくても済むように、少し鈍感になるようにできているんです。
これによって、心は疲弊せずに済むわけなんです。
逆に、命は危うくなるわけですが。
とにかく、人の心が持つ機能として「ある程度のことまでは鈍感になる」という力が備わっているわけです。
だから、うつ病になったことがない人が、うつ病を他人事のように感じるのは仕方がないことなんです。
ところが、未経験の人でも自分事として聞く時があるんです。
それは「私はうつ病じゃないか?」と思う時。
つまり、うつ病の症状のような自覚症状が出てきている時。
「いま何が起こってるんだろう」と思ってたけど、何かを見たり聞いたりしているうちに、うつ病の症状に似ていることに気づき不安になってる時。
正直言って、そこから予防をしようとしても遅いんですよね。
もうすでにうつ病なのかもしれないから。
というわけで、冒頭の
「これって、うつ病でしょうか?」
という質問に戻りますが…
この質問は全く意味がありません。
仮に「うつ病だと思いますよ」って言われたらどうするんでしょう。
薬局店で「うつ病の薬をください」とでも言うつもりでしょうか?
そんなことを言っても買えません。
医者の処方箋がなければ買えませんから。
一方で「うつ病じゃありませんよ」と言われたらどうするんでしょう。
「そうか〜。うつ病じゃないんだ」と安心して喜べるでしょうか?
「本当にそうだろうか」と、不安なままじゃないですか?
結局、医者の診断を受けるまでは、不安は解消されないんです。
だから私は言いません。
「うつ病じゃないですか?」とも、「うつ病じゃないですよ」とも。
それは誰のためにもならないから。
だから…お願いです。
「これって、うつ病でしょうか?」
なんて、聞かないで下さい。
他でもない、あなた自身のために。