『理想の私』と『本来の私』
前回に引き続き、公認心理士になるために勉強した内容を共有します。
心理学に興味がある方、公認心理師になるための勉強に興味がある方に、読んで頂ければ幸いです。
『グラフィック心理学』
北尾倫彦/中島実/井上毅/石王敦子=共著 サイエンス社発行1997年
を読んでの抜粋
第6章 パーソナリティ
人の性格を、タイプに分解して理解しようとする流れがあります。
(類型論と呼ばれます)
その一つに、クレッチマーの体型説があります。
細長型の人は、静かで内気。
肥満型の人は、善良で親切。
闘士型の人は、几帳面で凝り性。
分裂病や躁うつ病と、患者の体型にも一定の関係があると見出しました。
ユングは、外向型/内向型という軸と、感情的/意志的/思想的/社会的という4つの側面の組み合わせによる分類をしました。
例えば、内向型の思想的側面として「ものごとに対して懐疑的、批判的」など。
またアイゼンクは、性格が階層構造で出来ていると考えました。
その一方で、人は他者との関わりを通して、自己像を作り上げたり他者の性格を認知するという説もあります。
しかし、その見方はその人の過去の経験によって決まるので、誤った認知をもたらすことがあります。
例えば、良い人だとか偉い人だとか思うと、その人の他の性格までも好ましいものと認知したり。
(『光背効果』と言います)
あるいは、自分が持っている特徴を相手も持っていると認知したり。
(『投射』と言います)
性格検査にはいろいろなものがありますが、大きくわけると、質問紙法、作業検査法、投影法があります。
質問紙法は、期間をおいて再度実施した時の相関(再検査信頼性)が比較的高く、安定した結果が得られることや、実施が簡単なことが長所です。
作業検査法は、一定の作業を行わせて、そこでの反応に認められる特徴から性格を推定する方法で、虚偽の反応は起こりにくいが、測定しているものが特定の場面での意志的な性格特性に限られ、幅広い性格の側面が見られないという限界があります。
投影法は、あいまいな刺激への反応を求めることによって、自己の内部の奥深くにある衝動、感情、葛藤を引き出し、「なぜそのように反応したか」を、その人の様々な特徴と関連づけて洞察的に診断する方法です。
代表的なものに、ロールシャッハ・テスト、TAT(絵画統覚検査)などがあります。
イドは、◯◯したい、◯◯が欲しいという快感原則に従って動くが、◯◯してはならない、◯◯であるべきという超自我の規制を受けます。
この相反する力の間で葛藤が生まれて、自我はその調整に悩み、さまざまな方法で心の安定を図ろうとする仕組みを、フロイドは防衛機制と呼びました。
こういったことは、健常者にも病的な人にも現れます。
それらを無理矢理変える必要はないのですが、環境への不適応で悩む場合は、何らかの方法で普通の状態にまで変えるための援助が必要になります。
それが、心理療法です。
心理療法にも様々な種類がありますが、来談者中心療法は、ロジャースの考えにもとづくものです。
不適応で悩んでいる人の場合、自己概念と経験とのズレが大きく、経験が歪曲されたり、否認されている部分が多く、そこでそのことに気づかせて、ありのままの自分を受け入れるように援助すれば、治療が進み、自己成長を遂げることができるという考えです。
(自己概念=本人が思い描く自己像)
まとめはここまでです。
人の性格について様々な分類方法が考えられてきましたが、人の性格は、人が自分や他人をどのように見ているかで変わってくるし、間違った見方をすることもあります。
そこで、性格検査法が生まれてきたわけですが、検査結果の解釈の仕方によって意味合いも変わってきます。
大事なことは、性格を分類することではなく、性格を検査することでもなく、環境に適応できているかどうか。
『自分が思い描いている自分』と、『ありのままの自分』が、完全に一致するのは難しいとしても、一致しない部分が大きければ大きいほど、葛藤が生まれます。
もしも生きていくのが辛いと感じたら、そこには『ありのままの自分』との違いが隠れているのかもしれませんね。
次回は最終章の7章を紹介します。
第7章は『発達』。
ご興味がある方は、お楽しみに。
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