初心忘れべからず
「うつ病かもしれないと思ったら、病院に行く方がいいでしょうか?」
たまにそんな質問を受けます。
そのたびに、初めてうつ病になった時のことを思い出します。
あの時、私はどんな気持ちだっただろうかって。
初めてうつ病と診断された時、私はまだ30代前半でした。
若手と呼ぶには年をとり過ぎだけど古株と呼ぶには若すぎる、そんな年代でした。
若手と呼ばれた頃は、誰かの指示に従って仕事をしていればよかった。
そして、だんだん仕事に慣れてきたら、今度は自分なりのやり方で仕事をしてみたり、このやり方はどうだろうと先輩や上司に提案してみたり。
そのうちに、仕事を任されるようになったり、プロジェクトを任されたりして…認められる嬉しさもあったけど責任の重さに押しつぶされそうにも…
そんな頃でした。
何かおかしいと感じ始めたのは。
テレビなどで『うつ病』という病気があることは知っていました。
でも「私には関係ないな」と思っていました。
だって、真面目で神経質で気が弱い人がなる病気だと思ってましたから。
そりゃあ、私だって、自分のことは真面目だと思っていますが…気が弱いところもあると自覚はしていますが…神経質ではない…と思っていますし…とにかく、うつ病になるほど精神的に弱くないと思っていました。
普通の人よりは、波乱万丈の人生を生きてきたと自負しておりましたので多少のことではくじけるはずがないと思っていたんです。
でも、テレビで「こういった症状がある方は、うつ病の診断を…」というのを見ると、ほとんど該当していたりして…それでも「まさか私がうつ病になんてなるわけがない」と思っていたんです。
それでも…眠れない日がずっと続くと疲れもとれず…ぼ〜っとする感じもあって…うつ病の経験者が社内にいたので、どんな感じだったか聞いてみたんです。
「気軽に行ってみたらいいよ」
ざっくり言うと、そんなアドバイスでした。
うつ病かもしれないし、そうでないかもしれないけど、それは医者に診てもらわないとわからないこと。
うつ病と診断されたらどうしようとか思うかもしれないけど、診断されたからと言って、人生が終わるわけじゃない。
それよりも何よりも「いまが辛い」という状況を何とかした方がいい。
医者に診てもらえば、いい薬を出してくれる。
それでいいじゃないか。
そんな感じの話でした。
そして…病院に行って…うつ病だと診断されて…意外にホッとしました。
うつ病かもしれない。違うかもしれない。もしもうつ病だと言われたら、どうしよう。
なんていうモヤモヤが消えました。
そんなこと考えなくていいんです。
だって、うつ病だと分かったので。
何も悩まなかったと言えば嘘になります。
うつ病と診断されたなんて、周りに知られたらどうしよう。
家族はどう思うだろうか。
娘達はいじめられないだろうか。
もう仕事はできないんだろうか。
生活していけるんだろうか。
今から考えれば、ちょっと悩み過ぎだと思いますね。
結局、その時は、それほど重症ではなかったので、定期的に通院すれば、仕事を続けていいと言われましたし。
「こんなことなら、もっと早く来れば良かったなぁ〜」とも思いました。
だから、冒頭にあったような
「うつ病かもしれないと思ったら、病院に行く方がいいでしょうか?」
という質問を受けると、早めに病院に行く方がいいですよ。
と即答したくなるんですけど、それは、私が何度もうつ病を経験したから言えることであって、私だって、初めて病院に行く時は怖かったわけです。
その時の気持ちを忘れちゃいけないと思うわけです。
だから、質問されるたびに、自分が初めてうつ病になった時のことを思い出すようにしているんです。
『初心忘れべからず』ですから。