消えつつある神経症について
神経症とされる全ての心理現象は、不安を回避するためにつくられた過剰な心理的防衛機能に由来する。
byフロイト
フロイトの理論は、その後の文化や思想にも大きな影響を及ぼしました。
しかし、現在の精神科医療においては、それは一部の考えであって、それ以外の考え方や治療法もあるんです。
そう教えて頂きました。
前回に引き続き、夏期スクーリングの中で聞いた話を紹介します。
(スクーリングとは、実際に学校に行って、講義を聞くことです)
今回も、精神疾患とその治療1。
精神障害について学び、理解を深めるための講義です。
今回は、神経症とストレス関連障害についての話を紹介します。
神経症と言うと聞き慣れない言葉だと思うかもしれませんが、ノイローゼと言うと聞き覚えがありませんか?
「あの人、ノイローゼなんだよ」
「ちょっとノイローゼ気味だよね」
そんな会話を昔はよく聞きました。
例えば『育児ノイローゼ』とか。
まぁ、ノイローゼという言葉が消えつつあることを考えると、昭和世代にしか通じないかもしれませんけど。
今にして思えば、私の両親にとって昭和は大変な時代だったと思います。
第1次ベビーブームの団塊世代ですから、同世代が多くいる中で生き残るのは大変だったはずです。
そんな中で、子育てをしながら働くわけですから、ストレスも沢山あっただろうと思います。
また、オイルショックがあったり、チェルノブイリの原発事故があったりして、食料の心配もあったはずです。
また、高度成長期の中で「この子はこの社会に取り残されないだろうか」という不安もあったはずです。
高卒で働き始めた自分達が、大卒と比べて待遇が違うことに悔しい思いをしたこともあり「自分達の子供には、悔しい思いをして欲しくない」という願いを込めて、教育熱心になった背景も、いまならわかります。
その一方で、私達の世代で社会問題にもなったのは、学校内暴力や家庭内暴力。
大人に反発することが、カッコいいとされる雰囲気もあったし、そういう歌も流行った。
そういう中で、大人達は悩んだはずです。
私達は、どこかで道を間違ったのだろうか。
って。
そんな親達の心配が、大人になって分かる。
でもね。
今がもし「いい時代だな」と思えるなら、それはそれなりに、いい子育てをしてきた結果だと思うんです。
団塊世代が子育てをしてきた、団塊ジュニアである私達世代が、今の日本に影響を与える大きな存在ですから。
そうそう、ノイローゼという言葉が消えつつあるという話でしたね。
実は、世界には精神疾病の診断基準が、大きく2つ存在しています。
1つは、世界保健機関(WHO)が公表しているICD。
もう1つは、アメリカ精神医学会が公表しているDSM。
そしてノイローゼ(神経症)という言葉は、DSMからは消えています。
ICDには残っていますが「次回の改訂時に消えるのではないか」という話もあるそうです。
いずれにせよ、いつかは消える分類だということです。
不安症という名前に変わることで。
ちなみに、神経症は不安から起こるという考え方は、フロイトが提唱した理論ですが、他にも理論があります。
例えば、森田療法の開発者でもある森田正馬教授は「心身の状態に敏感な人が、偶然に心身の不調を自覚した際に、そこに注意が固着することで症状が出たものが神経症である」と考え、その注意の固着から自由になることで病気を治療しようとするのが森田療法です。
また一方で「神経症の症状は学習によって獲得された誤った習慣による」という考え方もあり、その学習を除去し、新たな学習をすることで治療することを目指すのが行動療法です。
さらに、脳内神経伝達物質が原因だとする考え方もあり、その研究の結果によっては、新たな薬物が開発されるかもしれません。
いずれにせよ、現代ではまだ明確な原因は分かっていないということは、理解しておく必要がありそうです。
だから、治療の際には全ての可能性を踏まえて臨みたいものです。
一つの治療法にこだわることなく。
これに限らず、心の病気全般に言えることですけどね。
うつ病に伴う悩みや心配ごとなど、まずは気軽に、ご相談ください。