忘れてしまいたいことを手放すために
「何でいつもあのことを思い出してしまうのだろう。なかったことにしたいのに…記憶から消したいのに…私の人生から消してしまいたいのに…」
誰にでも、1つや2つはあると思います。
記憶から消したい嫌な思い出。
覚えたいことは頭に入らないくせに忘れたいことは消えてくれないんですよね。
「なんて天邪鬼な頭なんだ!」
自分の脳を呪ったこともあります。
その時はわかってなかったんです。
思い出してしまうことに意味があるなんて。
「思い出したくない」と思えば思うほど思い出すようになっているらしいんですよね。
人間の脳って。
脳は否定語を認識しづらいそうで、「思い出したくない」という言葉は、『思い出す』+『したい』+『ない』というふうに認識するそうです。
つまり…
「思い出したくない」と3回も思うと、『思い出す』✕3回+『したい』✕3回+『ない』✕3回となるということ。
つまり…
「思い出したくない」と何回も思うたびに『思い出す』ということを何回も繰り返すことになるわけです。
そりゃぁ、忘れられないはずです。
何回も思い出そうとしてるわけですから。
だから「思い出したくないこと」を「思い出したくない」と思うのでなくて、忘れてしまってしまっていいことだと脳に理解させる方がいいんです。
しかし、それがなかなか難しい。
だって脳は「忘れてはいけない」と思い込んでしまっているから。
それを覚えておくことに意味があると思い込んでいるから。
まずはそこからほぐしていく必要があるんです。
本当は、うすうす気づいているんです。
あの体験があったから、もう二度とそんな体験をしなくて済むように注意深くなったり、慎重になったりしてるということに。
あまり認めたくはないけど、それがあったから、今の自分がいる。
だからと言って、体験して良かったなんて思わない。
できれば体験したくなかった。
でも、体験したことが、私の一部となって私の人格に影響を与えたことは確かなこと。
体験したことを、強烈な記憶として覚えておくことで、二度と同じ体験をしなくても済むようにしている。
でも、さすがにもう大丈夫です。
それを忘れたからといって同じ体験をするようなことにはならない。
そのことを脳に理解させれば、過去の記憶に苦しめられずに済むんです。
だから「そこで何があったのか」を最後にもう一度体験してもらうことにしました。
ちょっと怖いけど。
でも、体験するのは今の私ではなくて、過去にそれを体験した私。
過去の出来事を体験している過去の私を、離れた場所から眺めるだけ。
眺めていて辛いと思ったら、そっと目をそらしてもいい。
そして「私はいまここにいて、安心安全の場にいる」ということを充分に味わった上で、自分のペースで視線を戻して、また眺めたらいいんです。
辛かったら、途中でやめてもいい。
音が大きければ小さくしてもいい。
そして、その体験が私達に何を教えてくれようとしているのかに気づく。
それに気づけば、脳は安心します。
「もう忘れても大丈夫だね」
「もうわかったからいいよね」
「もう手放しても大丈夫だよね」
って。
そして、嫌な思い出の中にいる過去の私に話しかけました。
「辛かったね。もう、大丈夫だよ。私には、あなたがそこから生き延びてこれたことがわかっている。だって、私はあなたの未来だから。」
「さぁ、ここへ来て。ここが安全な場所だとわかるように。私があなたを抱きしめられるように。」
そう言って、過去の私を呼び寄せて抱きしめました。
胸の辺りから温かいものが広がるのを感じて、嫌だった思い出がす〜っと消えていくのを感じました。
そして、もう二度と過去の思い出に苦しめられることはなくなりました。
あの時の私は、今も私の一部として健やかに過ごしています。
安心安全な場所の中で。
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